エモートSS
孤島に陽が登る。
シャラシャラと砂を巻き上げながら一人の星の子が走り回っている。たった今覚えたてと見える指差しのエモートをあっちにそっちと勢いよくやってはいるが、指先す先に何がある訳でもないようだった。
その上空ではしんとした艶っぽい風が時折流れ、その風に浸りつつも遊ぶように鳥が行ったり来たりしている。
はしゃぐ星の子を下に見て見守っているような鳥もあった。
そこへ白いケープをゆったりとなびかせながら、もう一人の星の子がやってきた。
落ち着かない様子の星の子を見るや、白いケープの子はふわりと砂へ降り立ち、その星の子の元へと駆け寄った。ひとつお辞儀をしたかたと思うとそのまま白いロウソクを取り出し跪いた。
突然の出来事に驚いた星の子ではあったが、好奇心からかそれに応じる事にした。
ほんとうは綺麗なケープに見惚れてしまっただけなのかもしれない。
さあ。と差し出された手に戸惑っていると、鳥のような声で促されたので、一つ息を吐いてからそっと手を重ねた。
すると、やがてだんだんに、知らないはずの星の子の手になぜか懐かしさのようなものを覚え、身体の内からあたたまる感覚さえも感じられてきた。不思議な感覚だった。
そう浸っている子を知ってか知らずか、白ケープの子はストンと腰を落とし、身体いっぱいに勢いよく、シュピンと神殿を指差した。
反応をする間もなく次の瞬間、ぶわりと目の前に迫る白い布。陽の光を受けて波打つケープは、目が眩むほどに輝いた。目がそれに慣れる前に、身体がふわりと浮いた。
シャラシャラとした砂を舞いあげなめらかにゆったりと2人は飛び上がった。
もう一度白い羽が風を掴んで羽ばたくと、翼は火の粉を引いた。
キリで穿つように風の隙間を進み、滑り上がる。
グングンと力強く、砂地は遥か下に遠ざかっていき、太陽を背にした夜明けの神殿は目の前に迫ってきた。
呼び声がする。
近づくほどにより強く。より大きく。
そして、茶色いケープの子は始まりの神殿に降り立った。
ひかれる手、行くべき道は光が教えてくれていた。
ここから、遠くから、呼び声がする。
そして、星の子は真っ直ぐ前を指差した。
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これは2021年に #SkyエモートSS としてTwitterに投稿した文章を修正したものです。