タイトルのところの画像が見切れてしまっててすみません。
諸々の事情で修正にお時間をいただいてしまいます。お詫びいたします。
この度、thatgamecompanyのリードオーディオデザイナー 水谷立さんに、書面でインタビューさせていただく機会に恵まれました。
ソーシャル・アドベンチャーゲーム「Sky 星を紡ぐ子どもたち」の中に登場する、数多の魅力的な楽器。それらの音の作り手の言葉から、さらに魅力を掘り下げていけたらと思います。

花鳥郷にてお話を伺いました…ということにしておいてください
ハープという楽器
れい
今日はお忙しい中でお時間をいただき、ありがとうございます!
早速ですが・・・
Sky楽器は独自の名称を持たないものが多いですが、今回のハープについても、いろんな呼ばれ方があるようです。(「巣立ちのハープ」にははっきりとした名前がつけられています)。

ここでは便宜上、この楽器のことを「ハープ」と呼ばせていただきますね。ハープの音を作る上で、コンセプトはありましたか。
水谷氏
Skyの王国のハープ様楽器は、小さな星の子どもが背中に背負えて、いつでもヒョイっと取り出して軽やかに弾ける、私たちの世界で言うならベイビーハープに近いものなんじゃないかなと思いました。従ってグランドハープほど響きや麗しさ、豊かさを持った音というわけではなく、簡素な構造で手元でラフに響く気軽さをイメージしていました。

れい
確かに「星の子が王国の好きな場所で楽器を取り出しポロンと奏でる」イメージでいくと、楽器のチョイスといい見た目といい、ハープはSkyの世界観にぴったりですね。そして王国のあちこちで日々、実際にそれが起きていると思うと、ワクワクします!
音色について
れい
ハープのような、弦を張ってそれをはじいて音を出す楽器といえば、弦の素材で音色が変わることが大きな特徴のひとつかと思います。
以前企画させていただいたリモート合奏で、ライアーで参加された星の子さんの音に触れる機会がありまして…。その音色が、張られている弦がスチール(金属製)なためか? すごく輪郭が細くて、華奢な美しさに溢れていました。

水谷氏
いきなり前の質問の回答と矛盾しますが、音作りにあたってはグランドハープの音色がベースになっています。そこからエフェクト(音の具合を変える効果)を追加していって、飾り気を無くしていく方向で音色を加工していきました。
従って、弦の素材についてはグランドハープ(音の高さによって弦の素材が異なる)として割と一般的な構造になっていたかと思います。
採用している音の具体的な弦の素材については、資料が残っておらずハッキリとは分からないですが、確かにスチールっぽくはないように聞こえますね。

水谷氏の装いは、2025年アートフェスのパンフレットを参考にさせていただきました
れい
そうなんですね。てっきり昔の竪琴から音を取ったのかと思っていたので、グランドハープの音を元にされていたというのは驚きです。が、とても納得しました!
Skyのハープで出せる音はやや低めですが、そうしようと思われたのはリラ(いにしえのハープの一種)等に倣(なら)った、という感じでしょうか。
水谷氏
現実の古い楽器に倣ったというよりは、バランス的にそうしたという感じです。Skyがローンチされた当時は感謝の季節の鐘を含めても楽器の種類が少なく、複数の楽器を手に入れたプレイヤーもまだそれほどは多くないだろうと考えていました。そのため、それぞれが最初の楽器を持ち寄って一緒に演奏した時に、きちんと自分が奏でる音が他に埋もれずに聞こえるようにと、楽器には割と強めのキャラクター付けがされました。

楽器の名前は諸説あり、上記はれいが勝手に呼んでいるものになる
Skyがワールドリリースされた時点であった楽器の音域はこんな感じ。
程よく上下にバラけている。つまり、音の高さが被らないようになっている。
色分けは合奏のパートごと。
楽器の音の高さ=音域がばらけているほど、合奏した時にお互いの音が埋もれにくくなる
Skyがワールドリリースされた時点であった楽器の音域はこんな感じ。
程よく上下にバラけている。つまり、音の高さが被らないようになっている。
色分けは合奏のパートごと。
楽器の音の高さ=音域がばらけているほど、合奏した時にお互いの音が埋もれにくくなる
ピアノが割と固く明るめの音色になっているので、そこと被らないように音域(編集注:出せる音の高さの範囲)を少し低めに設定した覚えがあります。そのせいか今聞くとどれもやや癖が強いというか、特にベースのピチカート(編集注:弦を指ではじいて音を出す弾き方)っぽい音の弦楽器はかなり暴れ馬な音ですが(笑)、初期楽器はいずれも個性的で愛着があります。
れい
合奏で組み合わせることを想定した上でのデザインだったのですね。Sky合奏を愛する者としては、なんとも心踊るお言葉です!そしてベースは暴れ馬…!もう、妄想が止まりません。ベース大好き民としてはついもっとお伺いしてしまいたくなりますが、後の機会までとっておきたいと思います。

ベースは暴れ馬!!
次はハープというよりは楽器全体に関する質問になるのですが、楽器の音色や仕様を作る上で、苦労したところや思い出に残っているところがあったら、ぜひ聞かせていただきたいです。
水谷氏
最初にSkyのために音色をデザインした楽器はピアノで、次にベースっぽい音の弦楽器、そして3番目がこれ(ハープ)でした。ベースはかなり苦労した記憶があります。というのも、当時のスマートフォン端末の内蔵スピーカーは今よりも非力で低音が聞こえにくく、きちんとスピーカーでも聞こえるようにすると今度はイヤフォンで聞いた時にとんでもなくデカくて重い音になってしまうんです。なのでベースは、バランスを取るのに非常に苦戦した楽器でした。その印象が強いせいか、ハープは苦労せず割と短期間で完成したという記憶があります。
れい
ベース、個人的に大好きで、あの「ありそうでない独特の音」がクセになるんですが、開発はそんなに大変だったんですね…!なんだかベースにますます愛着が湧きました。何の根拠もないんですが、個人的にはハープが大変だったんじゃないだろうかと思ってました。が!蓋を開けてみてびっくり。やはり、お話を聞いて初めてわかることがたくさんあります。
楽器の音の制作ステップ
れい
楽器の音はどんなステップで作っているのでしょうか。よければお聞かせください。
水谷氏
実際の楽器を録音したり、シンセサイザーの音色を加工したり、複数の楽器の音色を重ね合わせたり、楽器の種類によって音の作り方は千差万別ですね。
https://x.com/MizutaniRitsu/status/1242255343960199170?s=20
不思議なもので、サウンドが実装されていない段階でも、ゲーム内で楽器を見るとどんな音が鳴っていそうか、ほぼほぼイメージが付いて来るんです。それと異なる方向性で作った音色は、ゲームに載せると「やっぱり違うな」となることが多いです。
感情表現は具体的なイメージがあまりないところから音作りをスタートすることも少なくないですが、楽器に関しては頭の中で鳴っている音に近づけていくためにベストな方法を選択する、というステップになることが多いです。

エモの音は楽器と違って、イメージ作りからのスタートとは。本当にすごい
れい
楽器のビジュアルを見たら頭の中で音が鳴る、というのは僭越(せんえつ)ながらなんとなくわかる気がします。そこに近づけて音を作っていく作業…想像しただけで胸が高鳴ります。対してエモートの音は、イメージからなのですね!完成した音を聞くとどれもピッタリで、しかも星の子らしい可愛らしさもあって。エモートとして、音から伝わるメッセージもたくさんあると感じています。一体どうやってイメージから音を膨らませているのかとても気になりますが、我慢して次の質問に参りましょう。
サウンドロゴ(Sky起動時、最初に流れる音)では、完成までになんと50回ほど作り直したというお話を以前の公式生放送で知り、衝撃を受けました。楽器の音もNGが出たりはするのでしょうか。何かエピソードがあればお聞かせください。
水谷氏
楽器音に関してのNGはあまり無いですが、いったんの完成とするまでに、ゲーム内で演奏して音を確認し、制作ツールに戻って音色を微調整する、という行き来が非常に多いジャンルでもあります。
楽器は「短い時間の間で何回も連続で鳴らす」という特徴があり、制作ツール上で音を聞き込んでいるだけでは分からない、連続で鳴らしてみて初めて気がつくニュアンスがあるんですね。

楽器の音の開発時には、連打した時の音の具合のチェックも。
確かに、連打の機会はとても多い気がする。
この画像は楽譜14番「Uneven Rhythms」、ベースは基本連打
ただAURORAの声の楽器に関してはJenovaやチームからの意見も多く、非常に多くの試行錯誤を重ねた、最も制作に苦労したもののひとつでした。
NGについては…チーム内で出るというよりは、ベータテストでの反応やフィードバックをみてリリースまでに音色を改善する、場合によっては作り直す、ということもあります。
サウンドは開発フローの後ろの方なので、なかなかベータテスト期間までには音を実装できないことが多いです。が、楽器は皆さんが気に入って末長く使っていただきたいので、たとえ1日でもテスト可能となるよう、優先して着手するカテゴリーになっています。

「AURORAの声」のとても美しい音色の裏には、膨大な試行錯誤が。
下のリンク先の公式動画には、楽器の音の元になった声の収録シーンも入っている。必見!
れい
Skyの音の心地よさ、楽器の音色の自然さの裏にはたくさんの試行錯誤やステップ、込められた思いがあるのですね。
ベータテストの段階で音を変えることもあるというのは、びっくりです。改めて、ひとつひとつの音が色々な条件や制限の中とても丁寧に、大切に作られているのだなと感じました。本当にありがとうございます。これからも大事に弾かせていただこうと思います。

怒涛のような美味なるコメントの前に、ハートが止まらない爺
楽器全体のお話になってしまいすみません。ハープに話題を戻しますね。Skyのハープでは、どんなところが気に入っていますか。
巣立ちのハープ
水谷氏
奏の音楽堂で入手できる巣立ちのハープ、これはオリジナル版と音色は一緒なのですが、見た目は持ちものアイテムの中でも1、2を争うくらい好きで、よく背負っています。英語名はFledging Harpといって、Fledgingはそのまま巣立ちと訳されますが、「巣立ちのために羽を生やす」というニュアンスが含まれる単語です。見た目も名前も鳥好きにとってポイントが高いアイテムです。

巣立ちのハープは奏の音楽堂で手に入る、課金アイテム
れい
巣立ちのハープ!インコラブのりつさんならではのチョイスな気がします。巣立ちを意味する「Fledging」にはそんな意味あったんですね。どこまでもSkyですね…!
今日はたくさんのお話を、本当にありがとうございます。よかったら最後に、楽器を愛する星の子さんたちへ一言お願いします。
水谷氏
いつも楽器を背負って下さりありがとうございます。自分も楽器一筋です。…いや白状するとしばらくの間瞬きの季節のカメラに浮気してしまっていましたし、最近も枯れ木箒やシャベルについつい気を奪われてしまいますが、気づくとやっぱり背中には楽器が一番落ち着きます。
今後も新しい楽器を追加していきたいと思いますし、こんな楽器を演奏したい&背負いたいというご意見がありましたら、ぜひ聞かせてくださいね。

お忙しい中のインタビューご協力、ありがとうございました
れい
ありがとうございます。
これまでたくさんの素敵な音を届けてくださり、心から感謝いたします。またこれからの楽器追加、楽しみにしています!
皆様、フィードバックや楽器リクエストがあればぜひ!声を届けてみてくださいね。
改めまして、本日はお忙しい中本当にありがとうございました。
2026年初頭、花鳥郷にて
写真提供 雅 @miyabi00028
イコ @honu413117418
校正 あきら (X: @chk___chk)
英訳チェック Grey (X: @grey_owl22)
pomme (X: @pomizun)
Special thanks to リン (X: @Lingotosky)