誰かのタイムカプセル
ここにはたくさんの記憶が眠っている。
頑丈そうで、重そうで、目立たぬようなデザインで、大切に守られた記憶。
何のために残されたのか、誰かに伝えるためだったのか、それは未だ分からない。
ただ、記憶を残したいという彼らの意思を感じてしまう。
同じ感情は続けば慣れてしまう。
時を経て思い出しても、今体現することはできない。
一過性で、その時、その一瞬のもの。
それを残したいと思う心は、過去を描きながら未来を見つめている。
誰かの記憶を見つけた時、過去と今にあっても心を通わせられる。
過去も、未来も、今も、異なる空間であっても、繋がれる。
それが「記録」なのだと。
うん、腑に落ちた。
ここに残るは、確かにあった誰かの世界。
彼らは何を見て、何を考え、どんな感情が溢れたのだろう。
それを真の意味で知ることはないだろうけど、目線の違いでしかないのかもしれない。
記録を覗けば僕の世界に現れる、体現しなかった可能性。
幻のような、夢のような、誰かの世界。
何を見て、何を考え、どんな感情が溢れるのか。
得られなかった可能性だからこそ、楽しめるものもあるんだろうな。
朝焼けに思う。
いつか夜深におちた僕らの記録を、誰かが開けたなら。
その世界で、誰が書いたかも分からないお伽話の様に残り続けるのだろうか。
……なんて難しい事を考えているのだろう!
もっと素朴に、楽しくて趣きのあることが世界に溢れているんだと、それだけ覚えていられれば良いのになぁ。
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当たり前の有り難し
王国のあちらこちらには、赤いキャンドルが置かれている。
……どうして?
僕が知っている賢い子供なら、ほくそ笑みながら、そう問いかけてくるかもね。
信仰的な意味合いがあったかもしれない氏、あちこちに置くことで精霊達の生活が何かしらに作用して豊かになっていたからかもしれない。
ただ、星の子が巡る今の王国においては、星の子が喜ぶ光のかけらが出てくる便利な存在である事は間違いない。
いつもの様にかけらを集めながら、ふと足を止める。
いつも同じ場所に置いてある赤いキャンドル、ふよふよと浮いている光のかけら、風に揺れる灯火。
僕が思うに、これはきっと、何も無いところからホワンと現れたわけではないのだろうな。
そんなの当たり前だ!
つまりは、当たり前だと言うことは、誰かがこの状況を作り出してい流ということだ。
一つは心当たりがある。
花鳥郷で毎日そこにいる、キャンドル職人さん。
近寄るといつも挨拶をしてくれて、「どうぞ」と言うように、傍にあるキャンドルを示めす。
そしてまた、黙々と箱の中の薄赤い何かをこねこねする。
まさか……王国中のキャンドルを作ってらっしゃる?
無理をして欲しく無いので、その可能性は想像しないでおこう。
こんな風に、きっとキャンドルを作ってくれる誰かがいるのだろうな。
同じようにキャンドルを置いていく誰かがいる。
どこかの星の子がそれに灯していく。
風が吹くから炎が揺れる。
きっとそう。
全て誰かが成してきたこと。
この風景を作る全ては虚空から生まれない。文字通りそこに有り難いもので、そんなことを考えているうちにキャンドルも愛おしく思えてきた。
猛スピードでキャンマラしてる時には微塵にも思えない。
たまにはゆっくりお散歩して、何かを大切に思える時間が欲しくなった。
じゃないと、いつかなくなってしまう時に、覚悟ができず心が辛い目に遭いそうだ。
闇の花がパンッと弾けて、すぐに光のかけらが拾えること。
ちょっとずるい4人扉の攻略方法。
色とりどり、形さまざまなお着替えアイテム。
広がって、バグのなくなった王国。
テーブルを囲んでお喋りしてるあの子達。
眉間に皺を寄せ、左上の数字と物欲の狭間で揺れて、チャラチャラチャラリと祝福を授かるあの子達。
この思考が残せる考察座。
企画に記事に、読みやすいレイアウト。
不便なしに、これを書ける環境。
何でもないこと。気づこうとしなければ通り過ぎてしまうこと。
それってきっと、誰かの行動が周り回って、僕らの何てことない幸せになっている。
僕らが手に持ち眺めている小さな窓の向こう。
誰かの、ちょっとした幸せを願う心がある。
思い過ごしかもしれないけれど、その心があると思う方が何だか嬉しい。
届かなくとも、「ありがとう」と心に思う。
巡り巡って、僕が受け取ったように、いつか誰かの幸せになるように。