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【空想随筆】静けさの庭体感記(上)

 

サウンドバス、日本語だと音浴と言うそうな。

  

音は体を振動させる。血行を良くしたり、自立神経に作用してリラックスさせたり興奮させたり、意識を自分に向けさせ記憶や感情を想起させたり※

……するらしい。

また賢くなっちゃった。

  

ここはそんな空間の様だ。

いっちょ蝉の声が染み込む岩の様に、己が禅を感じてみよう。

  

浮き石

不思議に浮いている石、その前に敷かれた座布団。

どうぞお座りなさい。

そう僕の心に言われている気がした。

  

どこからか声がして、「吸って…吐いて…」と呼吸を促される。

    

すぅ…

  

はぁ…

 

石の隙間が広がり、僕のお腹も膨らむ。

隙間が閉じて、お腹がへこむ。

  

石のリズム、僕のリズム。

僕らはなんて息が合うんでしょう。

  

すぅ……はぁ……

今ね…このまま寝ちゃいたいところ…

すう… はぁ…

すぅ…

うぅん…

足が痺れそうなので、次に行ってみよう。

小さな滝がトロントロンと水を注ぐ池。

ぷかぷか浮かぶまん丸水草。

薄桃色の花を咲かせる小柄な木。

小さな鯉が群れをなして泳いでいる。

そして誰かが浮かべた黄色いお花。

この池は、初めは小さな水溜りだったのかもしれない。

水が流れて、地面をほぐし池ができて、そこに水草や鯉がやって来た。

誰かが運んで育った木が花を咲かせ、僕らがやって来て花を浮かべる。

もしくは、こんな風に皆が調和できるように、誰かがこの池を作って、この風景が続くように、お手入れしているのかもしれないね。

水草が多くても、花を浮かべ過ぎてもいけない。

ほどほどを保つことが、きっと大切。

穏やかで、エネルギーを感じる。

それでいて、時間が流れているのに止まっているみたい。

僕らの憩う世界も、こうでありたいな。

地上絵

誰かの轍。うずまく細道

考え事をしながら歩いて、こんなぐるぐるな道になっちゃったのかな。

そして僕らはそれを、面白おかしくなぞるんだ。

てくてく

さくさく

ふみふみ

てくてく

もくもく…

たまにはのびのび

あ、誰かさん

すれ違ったり

道を譲ったり

また独りになったり。

そうやって真ん中まで来たけれど、そこには何もなく。

きっと、ここにあった宝物は、最初の誰かが手に入れたんだね。

悩み歩んだ誰かを真似た後は、

我が道をゆこう。そこに道がなくとも。

つづく

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※参考

低周波騒音に含まれる血流改善効果を持つ音成分の発見

解説 音楽と自律神経活動の関係:音楽への反応と心臓血管系反応の測定法(PDF)

デフォルトモードネットワークの脳科学 「こころ」を司る仕組みについて

音空間デザインラボ|音楽と脳