それは何気ない会話から始まった
新しい季節が始まったその日
いつもの手順でSkyにINし、ホームで彼と待ち合わせる
簡単な挨拶を交わし、今日から新しい季節が始まったと説明する
“そうだね、初めて見る精霊がいる“
“精霊の隣にあるものは何?“
「長椅子かな?」
“ナガイス?ナガイスって何?“
「座ったり横になったりする家具の事」
“カグ?“
「そう、家具。
ほらチャットテーブルとか火鉢とかあるじゃないか。
ああ言うのを総称して家具と言ったりするんだよ。
今度の季節の名称は『巣作りの季節』と言うらしいから巣に置く家具の一種じゃないかな?」
“ふーん。じゃあ“ス“って何?“
「巣?そうさなぁ、主に寝たり休んだりする場所、かな?」
“今僕が寝ている場所や休んでいたりしている場所とどう違うの?“
「巣があると流転しない決まった場所で眠れたり休んだり出来るようになる」
“決まった場所でないと眠れなくなる?“
「や、そうじゃないと思うよ。そこは君次第」
“今まで通り?“
「そうだね、今まで通り色んな場所、君の気に入った所で寝たり休んだり出来る」
“じゃあ“ス“は何のためにあるの?“
「休む場所が決まればそこに色々な物を置いたり出来る。
例えば、着替えとか、火鉢とか」
“HOME?“
「うーん、HOMEと言えばそうだけど、ちょっと違うな」
“???“
「HOMEはみんなの物だろ?」
“そうだね“
「巣は君だけのもの」
“僕だけの?“
「そう、君だけの場所、空間が巣」
“LINは来られない?“
「どうだろう?多分、だけど、君が許可すればいけると思うよ」
“ふーん、僕だけの場所、か “
「そう、君だけのプライベートな空間だから君の好きにしていいんだよ」
“、、、要らないかなぁ“
彼はそういうと小さく笑った。
“1人は嫌いじゃないけど、独りは少し寂しいかな“
「巣は君の物。
だから、誰か呼ぶも、1人で休むも君の自由さ」
“分かった、うん、とりあえず分かったことにしておく“
「いつものように季節が進んでクエストを消化していけば、きっと『巣』が貰えると思うんだ。
その時はもっとよくわかるようになれると思う」
“そうだね、今までもよくわからないまま達成した季節があったから、きっとそう“
彼は自分に言い聞かせるように呟く
“よくわからないものを考え続けてもあまり意味はないし“
「意味なくは無い」
私は少し不安げな彼を励まそうと少し強めの口調で断言した
「いつものように、そのうち色んなものが見えてくるようになるから大丈夫」
“そうだね、うん、そうだ“
「ではそろそろ」
“「巣作りの季節、始めようか」“

巣とは何か
作成日:2025年7月30日