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彼が本当にやりたかったこと

私には、病に倒れたフレンドがいた。彼が亡くなってから、もう1年ほどが経ってしまっただろうか。

彼とはXの相互フォロー同士で、フレンドになったのは、彼が亡くなる数カ月前だったように思う。

 

彼とサーバーが被ったら、キャンマラの手を休めて、立ち話にふける。若い男性ながら礼儀正しく、それでいて軽快なトークが特徴的な、とても人柄の良い方だった。

わざわざ動く手を止めてまで、話をしたくなる。そのくらい、お喋りの上手な方。

彼は、病院のベッドでSkyをしていることが多かったらしい。自らの病状が”末期”であるとも話してくれたから、間違えようもない。

彼は嘘を付くような方ではないから、私は、彼の言葉を聞いて、とても……とても悲しい気持ちにならざるを得なかった。

 


 

2026年2月。私は人生で初めてインフルエンザに罹患してしまった。秋に予防接種を済ませていたが、残念ながらすり抜けてしまったらしい。症状のピーク時は全身のだるさと吐き気に加え、喉の痛み・かすれ・咳・たん・鼻水・鼻詰まりなど…………熱は出なかったとはいえ、通常の風邪の10倍は重いであろう症状に悩まされていた。

Skyをするのも精一杯な状況の中、フレンドさんに助けてもらい、短時間だけと決めてログインしたときに、ふと、とある言葉が頭をよぎった。

 

 

『ベッドからは動けなくとも、Skyでなら、自由に飛び回れる。』

 

無論、病に倒れた彼の言葉である。そう、彼が亡くなってから……もう、1年ほどが、経ってしまった。

これはあれか、彼のしんどさの追体験か?

「インフルエンザでもこんなにしんどいのに、彼、もっとしんどかったんだろうな……」

いや、待て。自ら”末期”と言っていた彼の病状が、この程度のしんどさでおさまるはずもない。

「画面を見るのも精一杯だったはず。操作なんて、できるわけがない。」

彼とはいつだって立ち話で、それは恐らく、動く画面を見るだけでも……しんどかったはずで。

「本当に、彼は、本当に…………」

本当に飛べたのだろうか?本当は、飛びたくても飛べなくて……でも、飛べない、とは言いたくなかったんじゃ……

「キャリーすればよかった?でも、画面を見るのもしんどいのに、キャリーするのも違うか……?」

わからない、何が正しい答えなのか。彼にとって、何が正解だったのか。

「あぁ、駄目だ。私も今は、気持ち悪い……吐き気で画面を見ていられない。」

キャリーされるのも、考えるのも、限界。フレンドさんにギブアップを申し伝え、この日のSkyを終えた。

 


 

しんどい日々を乗り越えると、穏やかな休日が待っていた。

「ようやく”普通に”Skyを遊べるまでに回復したか……長かった。」

暖かな日差しの差し込む部屋で、ほんの少しだけキャンマラに勤しむ。

「……彼も、キャンマラしたかったのかな。」

日差しの先には太陽がある。

 

 

「私は、もうしばらくのあいだ、こっちの世界に居座るからな……」

彼のいる場所も、今日のように暖かな場所であってほしい。

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