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03_小川のほとりの工房

小川のほとりの工房

– 石と木と、ダイヤと –

 

 

 

小川のほとりの工房(仮称)は、雨林の中ほど、小川を見下ろす位置に存在している廃墟だ。中にはさまざまな素材や未完成の道具などが残り、雨林時代の文化や技術を知る上でも、とても興味深い建物である。この工房を使っていた主人は今のところ判明していないが、『大樹に集う季節』でその記憶を覗いた子供たちの、関係者にあたる人物だったのかもしれない。

 

 

周辺の様子。白く直立した木々と雨に閉ざされるように、しんとそこにある。

 

 

 

 

かつて雨林には『石切場』と呼ばれるコンセプトがあった(以前のコンセプトアート内の話となるため、現行では不明な情報であることをご留意いただきたい)。また、現行版に関して確認できる資料としては、

『雨林は、Skyの自然な世界から工業化へと移行していく際に、重要な役割を果たした』

『ここでは森林伐採が始まり、光資源が開発されるにつれて、その代わりにThe  Void(虚)の要素が成長していく』(アートブックP108)

とある。石と木と火で育まれていきた文化と文明はここで、石と木と、“光資源“へと転換していった。つまりは雨林地下で採掘されていた『光を溜めて保存・利用できるダイヤ』へと『集められた光の粒』を充填する技術のおかげで、飛躍的に技術が成長していった舞台なのである。

これに関しては、またいつかの雨林の神殿の回で掘り下げたい。

 

 

 

長くなってしまったけれど、この工房が建つエリアというのはそういう場所だ。

 

 

工房の入り口から外を見た景色。開口部が広いのは、船で運ばれてきた資材を搬入したり、完成した道具を搬出して行くためだろう。雨林にはいくつもの船の残骸が墜ちているが、この木々や雨の間を縫って船が進んでいくのを、見てみたかったと思う。

 

 

内部の様子。こじんまりとした部屋の中に、さまざまな素材が遺されている。

 

 

まず室内から玄関に向かって右側。壁際に立てかけられたまま、草に埋もれてしまいそうな石造りの細工。

 

 

これは、我々星の子たちがいつもお世話になっているアレである。炎をダイヤ部分に灯すことで作動する、門や扉を開閉するための機構だ。

さまざまな場所で見かけるあの機構は、この工房で造られていたのだという感動がある。

 

 

 

 

続いて玄関向かって左側の作業机。懐かしいキノコは、食用ではないだろう。引っこ抜くと光の欠片が取得できる(不思議の国のアリスカフェより)ことから、光資源を利用するために集められたのかもしれない。

その他に、組まれた木の枝はタイマツとなる予定だったようだし、そして……

 

 

これは、前述した門を開閉するための機構の、上部に取り付けられている枠と、ダイヤだ。

(あまりに廃墟内が暗いため、筆者がシャイン状態になりながら撮影している。画像が大変まぶしいことをお詫びいたします)

石造りの細工といい、木材で造られたものといい、石工・木工・さらにはダイヤの技術まで、大変有能な職人がここにいたのだという形跡。

雨林へ踏み入れた際の『光を護り、太古の技巧を追い求める』という言葉を、ここにいると思い出す。

 

 

そしてこの廃墟を象徴するものでもあるのだが、このマーク。

これが描かれた壺が、建物に通ずる出入り口の外側や、廃墟内にいくつも存在する。

 

 

 

 

このように、各地のツリーハウスを示す地図の上でも、この小川のほとりの工房に関してはこのマークで表されている。しかしこの廃墟が発見された大樹に集う季節当時、このマークは何を意味するものなのかわかっていなかった。

しかし、2023年6月の彩なす日々にて、実に2年越しにこのマークが何であるのか判明する。

(見辛い上に、突然の色彩の濁流に酔いそうな画像である。お詫びいたします)

彩なす日々は『私たちが生きるこの多彩な世界を祝福するために、“たくさんの虹をかける”』イベントだ。極彩色のお祭り会場となった『草原の式典会場』に、このマークが現れた。

そう、このマークは虹だったのだ。

小川エリアには、朝と夜にわずかな時間虹がかかる。工房の中にいると、ちょうど玄関越しにそれが見えたことだろう。

『目』であるとか『光とそれを閉じ込める蓋のモチーフ』であるとか、大樹の季節当時はたくさん盛り上がったけれど、ヒントは何年もかけて、全く別の場所に現れる。“考古学者ごっこ“の楽しみが、ここに詰まっていると思う。

 

 

 

 

余談が長くなったが、ではこの工房に遺る『虹マークの壺』は何が入っているのだろう。

カラフルなインクでも入っているのかも、とも当時は思ったが、『光に染まる季節』で染料壺がしっかり出てきたので、違いそうだ。

工房前に虹がかかることから、工房のトレードマークとして虹の紋様を、工房内の壺に彫り込んでいたのだろう。商品の出荷の際にも使われたかもしれない。

日本で言えば、『屋号紋』のようなものだろうか。この工房を指して「あの“虹屋“へこの道具頼んでおいて。あそこはいい腕してるから」のような会話が……あったかなかったかは分からないが、雨林のそこかしこから聞こえてきたのではないだろうかと思えてくる。

 

 

 

最後に、アートブックより引用する。

 

(雨林のエリアについて)新しい技術や機械を導入するために、製材所や工場を思わせる構造物を建てることにインスピレーションを受けた。そこにある遺跡は、“民間人たちは成長を目指す勤勉な労働者である“ということを示す。(アートブックP109)

 

空へ還る巡礼よりも、その地に留まりさらにより優れた王国へと育むことを選んだ、精霊たち。

この工房を見ていれば、どれだけ彼らが“勤勉”で、真っ直ぐに仕事をしていたのかがわかる。豪華絢爛な峡谷時代に至るまでの礎となった、この場所に住んでいた技術者たちを想う時、静かな感情が湧いてくる。

より強く。より早く。より便利に。この王国を、天よりも素晴らしい場所に。

日々進化する技術や、発見される鉱石に、胸躍らせて夢見たことだろう。実際彼らと、新しい技術や鉱石のおかげで、王国は栄華を極める。でもそれは、何百年もかけてゆっくりと進行する遅効性の毒のようなものだったのだと、星の子たちだけが知っている。

 

 

 

しかし、“永遠に終わらない国“は存在しないし、“絶対に人を傷つけない道具”もきっとない。

だからこの場で起こった産業革命的な“奇跡の技術”も、それを産んだ技術者たちも当然悪ではない。

当時ここで一生懸命、石を砕いて木を削り鉱石を磨き続けた職人は。

真っ直ぐで、優秀で、そして虹を工房のアイコンにしてしまうような愛すべき精霊だったのだろうということだけは、記しておきたい。